悠三堂の歴史 2016-2020

FOUNDER'S STORY — 02

30歳、無経験の僕が
自然栽培の農家になれた話

②悠三堂のこと編

株式会社悠三堂 礒崎遼太郎

畑もお金も経験もなかった僕が、
人との出会いに支えられて自然栽培を始めるまでが、前編でした。

後編は、株式会社悠三堂という会社のこと。どんな畑で、どんなふうにお茶を作っているのかをお話しします。

第一章

悠三堂の設立

2016

2016年、奈良で大きなお茶畑をお借りできることになり、一気に農家として自立する機会をいただきました。最初に6反の茶畑を借り、「近隣の畑もどうぞ」と貸していただけるようになり、合計の面積が1町を越えたとき、これからを見越して株式会社悠三堂を設立しました。

悠三堂設立のころ

「就農する」と言っていた頃は友人たちに随分心配をかけましたが、「会社を作って社長になった」と言うと、みんなとても喜んでくれました(笑)。会社で課長になるより、会社を作って社長になるほうがずっと簡単だと僕は思っているのですが、何にせよ「代表取締役」の肩書は結構強力です(笑)。

悠三堂のロゴマーク
屋号は父のニックネーム「ゆーさん」、ロゴは戒名「鳳良」から

屋号の「悠三堂」は、僕ら家族を愛し、大切に育ててくれた亡き父のニックネーム「ゆーさん」から。ロゴマークは父の戒名「鳳良」がもとになっています。デザインしてくれたのは、アメリカのグラフィックデザイナー、Ken Baughmanです。亡き父も、一緒に働けるように。

兄妹二人の会社

悠三堂は、僕と一つ年下の妹の小さな会社です。昔を思うと、二人で一緒に仕事をするなんて想像もしていませんでした。頑張り屋で社交的な、素晴らしい妹です。

第二章

大和高原の茶畑

メインのお茶畑は、大和高原・奈良市上深川町にあります。標高約500mの高原で、新茶の時期は日本で一番遅いと言われるほど。昼夜の寒暖差が大きく、味の乗った美味しいお茶が穫れる土地です。

大和高原・上深川の茶畑
標高約500m、大和高原の茶畑

新規就農で始めた僕らの圃場は各地に点在しています。お茶の栽培面積は3町を超え、水稲や野菜、ぶどうや梅も育てさせていただいています。畑には最初から、肥料も農薬も入れていません。土と草とお茶の木の力だけで育てる、自然栽培です。

各地に点在する圃場

肥料も農薬も、入れない。
土と草と、お茶の木の力だけ。

第三章

お茶作りの日々

お茶の収穫が始まると、忙しい日々が続きます。かなりの重労働なので、この時期は筋肉がついて、鏡を見るのが楽しいです(笑)。

お茶の収穫

2018年には、近所の農家さんから乗用摘採機を譲っていただきました。作業効率は3倍ほどに。機械の名前は「ななこ」。かわいらしい名前なので、たまに誤解されます(笑)。

乗用摘採機ななこ
乗用摘採機「ななこ」

一般的にお茶は、最も多く肥料と農薬を使う作物のひとつと言われています。だからこそ、無肥料・無農薬での栽培はとても難しい。収量の減少や樹勢の低下を抑えるため、お茶の木にできるだけ負荷がかからないよう、慎重に葉を摘みます。一番茶だけにこだわらず、日々の暮らしの中で楽しめるお茶を心がけています。

慎重な収穫

製茶は主に、有機専門の製茶場さんにお願いしています。自分たちの加工場も構え、できるだけ自然に近いかたちでの紅茶づくりもできるようになりました。「紅茶の味、随分変わったね」と言っていただくことが増えました。

自分たちの加工場
自分たちで構えたお茶の加工場

遅霜で新芽が大きくやられた年もありました。それでも自然栽培のお茶の木は強く、一ヶ月後にはまた新しい芽を出し、無事に収穫できました。

霜の後に芽吹いた新芽
第四章

悠三堂のお茶

抹茶は、世界でも数少ない、自然栽培・手摘みの宇治抹茶です。

手摘みの様子
自然栽培・手摘みの宇治抹茶

同じ畑から、季節と製法のちがいで、それぞれのお茶が生まれます。

抹茶
抹茶
煎茶
煎茶
ほうじ茶
ほうじ茶
烏龍茶
烏龍茶
和紅茶
和紅茶
紅茶の加工
自然に近いかたちでの紅茶づくり
第五章

悠三堂のこだわり

プラスチック製のティーバッグは全面的に廃止しました。今は植物性素材のソイロンメッシュと、無漂白の紙のティーバッグだけを使っています。

植物性素材のティーバッグ

袋詰めは、福祉施設の方々にお願いしています。クオリティはどんどん上がっています。

袋詰めの様子

社員は二人だけ。だからこそ、徹底的な効率化と情報共有を心がけています。役割分担は——
僕:農作業、経理、システムとデザイン。
妹:袋詰め、営業、発送、仕掛けとイベント。

仕事のほとんどはスマートフォンで完結するようにしています。自家製の「悠三堂ソリューション」、会計はfreee、ECはShopify、お客様とのやりとりはLINE公式、発信はInstagram。

有機JAS認証は2018年に取得しました。年間の費用はかかりますが、僕らのお茶のパスポートだと思って、続けています。世界で最も厳しいと言われる秀明自然農法の認証も取得しました。地域の方々の協力で認定農業者にもなり、日本茶インストラクターの資格も取得しました。

認証書類

年に一度、悠三堂の抹茶を使った「悠の茶会」というお茶会も開いています。お茶を作って、お茶を点てられる茶人へ。抹茶はもちろん、点心の食材も自分たちの畑のものです。

悠の茶会
年に一度の「悠の茶会」
最終章

自然栽培の農家になれたのは

家族と畑
  1. 周りに自然栽培を教えてくれた人がいたこと
  2. 優しく信じてくれる家内がいたこと
  3. 先輩生産者が圃場を譲ってくれたこと
  4. まとまった圃場が手に入ったこと
  5. 初期投資が比較的安価だったこと
  6. お茶が美味しかったこと(笑)
  7. ポジティブなメンタルを保てたこと

畑もお金も経験もなかった僕らは、
出会いに恵まれて、奈良の高原でお茶を作り続けています。

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