julio 30, 2026

マイペースという戦略

Por 礒﨑遼太郎
マイペースという戦略

今日は、今年のお茶刈りを、あらためて振り返ってみたいと思います。

悠三堂のお茶づくりは、ざっくりと四つのシーズンに分かれています。そのうち、春と夏、二つのシーズンが終わりました。ふり返ってみて、いちばん大事にできたと思うこと。それは、自分たちのペースを、最後まで崩さなかったということです。

マイペース、と言うと、なんとなく受け身に聞こえるかもしれません。でも僕にとって、これはひとつの戦略です。急がないと決めること。焚らないと選ぶこと。そのうえで、確実に積み上げていく。今年もまた、その手応えを確かめられた二つのシーズンでした。

崩さなかった、週二・週三

今年いちばん良かったのは、週二、もしくは週三で働くというペースを、崩さずにできたことです。

繁忙期になると、どうしても詰め込みたくなります。刈れるだけ刈って、走れるだけ走って。でも、それをやると、どこかで無理が出る。人も、自分も、疲れが抜けなくなる。

だから今年は、自分たちのリズムを保ったまま、繁忙期を越えることを目指しました。結果として、春も夏も、無理なく走り切れた。海外から本当にたくさんの仲間が来てくれたこともあって、どちらのシーズンも無事に終えられました。

七月に入ってからは、すごく暑くなったり、前半は雨の日が多かったり。雨が続くと、茶葉をうまく運べなくて気を揉むのですが、それでも慌てずに、なんとかやり切れました。

マイペースだから、めぐり合えた

面白いのは、急がずにいると、かえって良いものが向こうからやってくる、ということです。

今年の大きな変化は、何度もお伝えしているとおり、これまで協力していただいていた県外のお茶工場から、奈良の地元のお茶工場を使うようになったことでした。提携してくれる工場が増えたことで、さらに自由度の高いお茶づくりができるようになりました。将来的には、煎茶をつくる工場を自分たちで持つことも、視野に入ってきています。

僕らは、本当にゼロから、十二年ほどお茶づくりを続けてきました。それが、やっとこういうチャンスにめぐり合えるようになってきた。焚って追いかけたのではなく、マイペースで続けているうちに、縁のほうから近づいてきてくれた。そんな感覚です。それが、すごく嬉しかったです。

マイペースでも、ちゃんと増えていく

急がないと、成長できないのではないか。そう思う人もいるかもしれません。でも、実際は逆でした。

今年から、お茶の生産量もぐっと増えました。碾茶も、紅茶も、それぞれ生産量を上げることができました。茶畑も増え、その傾向をずっと続けられています。これからも成長する余地は、まだまだあると感じています。

もちろん、量が増えれば、それにどう対処するかという課題も、そのぶん増えていきます。でも、これはありがたい悩みです。つくれるものが増え、届けられる先が増えていく。その中で、どう無理なく回していくかを考える。マイペースを保ったままでも、ちゃんと育っていける。それが、今年よく分かったことでした。

人も、マイペースで受け入れる

ペースを大事にするのは、作業だけの話ではありません。人との関わりも同じです。

今年は、たくさんの海外の人に、自然栽培のお茶づくりを一緒に体験してもらえました。中でも、アクセルが二ヶ月間、春と夏、どちらのシーズンもフルに体験してくれたことは、本当に楽しかったです。

長く一緒に過ごす中で、思ったことがあります。人に何かを伝えたり、学んでもらったりするとき、教育として考えるなら、楽しいイベントや、交流の場を、もっと作っていくべきだなと。ただ作業を教えるのではなく、一緒に楽しむ時間の中で、自然と伝わっていくものがある。急がず、じっくり過ごした二ヶ月が、それを教えてくれました。また、いつか会えたらいいなと思っています。

同時に、自社のお茶工場もうまく稼働させることができて、とても有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました。

これからも、慌てずに

夏が終わると、少し夏休みを挟んで、また次のシーズンが始まります。夏から秋にかけての、発酵茶のシーズン。そしてその後の、晩茶のシーズン。一年はまだ、半分残っています。

そして今年は、DIYでカフェづくりも始めました。自分たちの手で、少しずつ。お茶をつくる場所と、お茶を味わってもらう場所。その両方を、この奈良の地に、焚らず育てていきたいと思っています。

もちろん、課題もあります。僕らは、働く期間をあえて限定しています。そのぶん、つくる機会や届ける機会を、いくらか逃している面もあるかもしれません。拠点とカフェをどう連携させていくか、考えることもまだたくさんあります。

それから、YouTubeとどう連携していくか。なかなか進まないのが、僕らの至らないところで、難しいなあと正直感じています。でもまあ、それもいつか、なんとかなるでしょう。慌てず、少しづつやっていきます。

スローに、確実に

結局のところ、僕らは、会社として大きく成長させていく要素は取り込みながらも、実際にはゆっくりと、スローなペースで、確実に積み上げていく。その方向を、ずっと取り続けています。

大きな変化が起きて、それに振り回されるのではありません。変化を静かに受け入れて、そこから少しづつ改善していく。そして何より、ほとんどのケースで、この形がちゃんと成功できると分かってきた。それが、今年のいちばん大きな出来事のひとつだったと思います。

マイペースは、逃げでも、妥協でもありません。十二年かけてたどり着いた、僕らなりの戦略です。派手ではないけれど、確かに前へ進んでいる。その手応えを噛みしめながら、また次のシーズンへ向かいたいと思います。

二つのシーズンを、無事に終えて。まずは、支えてくれたすべての人に感謝して。今日は少し、ゆっくりお茶を淹れたいと思います。これからも、どうぞよろしくお願いします。


こうして一年のお茶刈りから生まれるお茶を、悠三堂ではお届けしています。毎日の一杯に、よかったらどうぞ。
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