悠三堂の歴史 2024
FOUNDER'S STORY — 06
30歳、無経験の僕が
自然栽培の農家になれた話
⑥ 人を巻き込む年編 2024
株式会社悠三堂 礒崎遼太郎
2024年は、
「一人でやる自然農法」から
「多くの人を巻き込む自然農法」へ
移りはじめた一年でした。
直売所がオープンし、悠三堂水田部がはじまり、フランスからヴィンセントくんが加わりました。遅霜で新茶は半分以下。それでも慌てずにいられたのは、支えてくれる人が増えたからです。この一年の歩みをたどります。
ゆとりの生まれた冬
1月は、有機JASの実地検査、駐車場づくり、福袋の発送業務に取り組みました。ここ数年、働き方を見直し続けてきたことで、ようやくゆったりと余裕を持って働けるようになってきた実感があります。福袋はお客様から大好評で、嬉しい悲鳴をあげました。昨年からアメリカ人のジェフと一緒に働き、会話がほぼ英語という環境で過ごすうちに、自身の英語力も飛躍的に向上。これから増えるであろう海外との取引や観光客の受け入れに向けて、準備が整ってきたことを実感しています。この年は「カフェ直売所づくり」「アメリカ進出」「経営者として一皮剥けたい」「YouTube」という目標を掲げました。
2月は、生産者の交流会、経理勉強会の開催、若手生産者の集まり、悠三堂茶道部の活動、決算準備、ゲストのお迎え、発送業務と、幅広く動いた月です。若手生産者の集まりでは多くの同世代と交流し、その層が着実に厚みを増していることを実感しました。事務所での経営勉強会も継続して開催し、経理の専門的な内容からそれぞれの悩みまで相談し合っています。稲作の勉強会にも参加し、発表の機会もいただきました。経営や資金繰りについて先輩の生産者から相談を受けることも増え、金銭的に苦しむ自然農法の生産者を支える活動にも意欲が湧いています。福祉事業所の主要スタッフが体調を崩し、久しぶりに会社をワンオペで乗り越える場面もありましたが、決算と春の番茶収穫という山場は軽々越えられそうだと前向きに捉えていました。
直売所が、開いた
この年の年頭に掲げた目標のひとつが、「カフェ直売所づくり」でした。2月、4月と、決算や農繁期の合間を縫って、少しずつ形にしていきます。農作業と並行して進めるのは楽なことではありませんが、ここ数年で作ってきた体制のおかげで、手をかける時間をつくることができました。
そして5月、ショップがオープン。この月に来訪した50人以上の方にも、オープンしたばかりのショップを体験してもらいました。自分たちの畑のそばで、直接お茶をお渡しできる場所ができたことは、この年の大きな一歩です。秋になっても9月、10月とカフェづくりは続き、一年を通して手を入れ続けた場所になりました。
春番茶と、新しい仲間
3月は、春の整枝作業と春番茶の収穫に取り組みました。3月は悠三堂にとって最も忙しい時期です。半月ほど体調を崩しながらも作業を続け、週末はしっかり休養を取りました。三人のスタッフが協力してくれる体制がとても心強く、自身の不調時にも作業は順調に進みました。今月から21歳の青年が見習いとして加わり、一人前の実施者に育てていく方針です。新しく作り直した英語版のオンラインストアから注文が入るようになり、インスタグラムを通じた海外からの見学希望も増えてきました。
4月は、春番茶の収穫作業、決算準備、もみまき、苗土ふるい、ファームツアー、出荷作業と多忙な月でした。英語力の向上により海外からの問い合わせが急増し、3月にはマレーシアからのツアーを受け入れ、月末からはフランス人のインターンも始まりました。ジェフとの信頼関係も一段と深まっています。3月から始まった地元青年のインターンには、1年をかけて考え方や自然農法の作業、英語力、自主性を身につけてもらう方針です。
悠三堂水田部、はじまる
4月、この年の新しい取り組みとして「悠三堂水田部」を開始しました。自分たちを含めた4家族で田んぼづくりに取り組み、それぞれの家族が子供を連れて、一年分のお米を食べ続けられることを目標にスタートしました。
6月には活動が本格化。昨年から田んぼを紹介してもらう機会が増えたことで、この年は6反以上の作付けを実現しました。自分たちと妹の家族を含む四つの家族で取り組み、種まきや苗代設置はみんなで協力し、耕運・代かき・田植えは各家族で体験する形に。作業は主に週末に行い、平日の水位確認や水入れは自身が担当しました。暑い夏の水入れも、水田部のみんなが担ってくれました。
10月、稲刈りも無事に終了。各家庭で反収およそ6〜7俵という喜ばしい成果を得ました。11月には昨年のほぼ2倍のお米の収穫となり、俵入れにも水田部のメンバーが参加。みんなで作業を分担できたことで、自身の作業も大きく軽減されました。
一人でやる自然農法から、
多くの人を巻き込む自然農法へ。
遅霜の春、穏やかな夏
5月は、朝早くからの作業報告書づくりに始まり、お茶刈りや田んぼの準備を進めました。自然農法を学びたいという海外からの滞在が続いた月で、ベルギーの方、ロンドン在住のポーランドの方がお茶栽培を手伝ってくれました。5月10日の遅霜の影響で、この年の新茶の収穫量は例年の半分以下に減少。何度も経験してきた被害ではあるものの、これをプラスに変える新しい取り組みを続ける決意を新たにしています。19日には50人以上が来訪し、雨の中で圃場の草取りをしながら、これまでの取り組みについて話す機会がありました。6月は、紅茶づくりと番茶の収穫に取り組みました。
7月は、除草作業、茶畑の除草、お茶の収穫、悠三堂茶道部の活動、動画用スタジオづくり、見学の受け入れ、お茶イベントと、盛りだくさんの月でした。この年も無事にお茶の収穫が完了。霜の影響で収穫量は減りましたが、昨年からのストックが豊富にあり、大きな影響なく過ごせました。水田部・茶道部の活動にも来訪者が参加するようになり、10年前に農業を始めた頃に思い描いていた理想的な形が、少しずつできつつあることを実感した月です。8月は、新しいデザインづくり、草刈り、茶畑の草取り・草刈り、古民家清掃、マルシェ出店、YouTubeスタジオづくりに取り組みました。8月3日には綾部市のイベントに自然農法のお茶農家として出店し、意識の高い参加者から多くのお茶を購入していただきました。8月18日には奈良市の大和茶イベントにも招待され、奈良県産の自然農法のお茶農家としての認知度が高まっていることを実感しています。福祉施設グリーンサムの皆さんが茶畑と田んぼの草取り、ジェフが草刈りを担当してくれる体制が整い、暑い夏をゆったりとした気持ちで過ごすことができました。
ヴィンセントが、やってきた
6月、フランス人のヴィンセントくんが定期的に働くようになりました。アメリカ人のジェフに加えて国際色は一段と豊かになり、フランス語の会話練習の機会が増加。自身のフランス語も飛躍的に上達しました。7月には、車での行き帰りにフランス語のレッスンを受けられるようになりました。彼は元パティシエで、フランスのお茶屋さんでの勤務経験もあり、大きな戦力となっています。
8月の大和茶イベントでは試飲を担当してくれ、試飲のクオリティが上がったことでたくさんの問い合わせをいただけるようになりました。この年はヨーロッパ、特にフランスから多くのお客様を迎えており、簡単なフランス語での会話もできるようになった手応えを感じています。10月には彼の紹介で4名のフランスの方が悠三堂を訪れ、お茶の製法や理念について話す機会がありました。インスタグラムのフォロワーもフランスを中心に増えており、近いうちにフランスツアーの実現を目指しています。12月、フランスに帰省中も積極的に営業してくれたおかげで、ヨーロッパ各地からお茶の問い合わせが増加しました。
実りの秋
9月は、草取り、田んぼの畖草刈り、満月萌茶づくりなどに取り組みました。8月末に長男が入院し一緒に過ごす時間もありましたが、そんな中でも袋詰めや発送、草取り、水田での農作業を任せられる体制が整いつつあり、心穏やかに過ごせた月です。ロンドンから新しい取引先が来訪し、満月に作ったお茶や三年番茶に大変興味を持ってもらいました。
10月は、番茶づくり、白茶づくり、有機JASの申請準備、新デザインの制作に取り組みました。提携している福祉事業所「グリーンサム」の利用者が新たな一歩を踏み出したこと、そしてそれが直接ではなく支援員の導きによるものだったことを、自身のこと以上に嬉しく感じています。11月は、有機JASの実地検査、見学者の受け入れ、しろばんちゃづくり、マルシェ出店に取り組みました。海外からの来客も続き、この月はトルコとフランスから来訪がありました。自然農法が世界から注目されていることを実感し、これからはもっと多くの人を巻き込んで自然農法ができるように工夫していきたいと考えるようになりました。
思わぬところから、思わぬ流れで
12月は、三年番茶づくり、新しい機械の購入、OPEN WORK DAYの開催に取り組みました。来年からのお茶の増産を見越して工場を改修し、新しい製茶機械を購入。無骨だったお茶工場が、ややおしゃれな工場に生まれ変わりつつあります。来年から悠三堂での研修受け入れも決まり、自然農法と基礎的な英語をしっかり学んでもらえるカリキュラムづくりを始めています。
この一年を振り返ると、思わぬところから思わぬ流れで、たくさんの発展をいただけた年でした。
一人ではじめた自然農法が、
たくさんの手に支えられる一年になりました。