自然栽培の米作り 一年目の教科書

自然栽培の米作り

一年目の教科書

農薬・化学肥料・除草剤を使わずに、全くの初心者でも一年目から収穫までたどり着くための道しるべ

一年目から、ちゃんとお米は穫れます

「無農薬・無肥料の米づくりは難しい」と言われます。けれど実際には、失敗の原因のほとんどは知識ではなく段取りです。いつ・何を・なぜやるのかがあらかじめ分かっていて、除草の初動さえ逃さなければ、初めての年でも収穫までたどり着けます。

このサイトは、田植え日を決めるとあなたの田んぼ専用の作業暦がその場でできあがり、それぞれの作業のやり方とつまずきどころを一つずつ確認できるようにつくられています。

1
小さく始める一年目は1畝(30坪)〜1反まで。小さな田で全工程を一巡りする経験が、何よりの教科書になります。
2
田を平らに、水を深く代かきの均平と深水管理(5〜7cm)で、雑草の大半は生える前に抑えられます。
3
除草は「見える前」に草が見えてからでは遅い。田植え後3日からのチェーン除草で、見えない芽のうちに絶やします。
4
出穂日を記録する収穫適期は出穂から40〜45日。この一つの記録が、稲刈りの失敗を防ぎます。
5
一人でやらない水利や畔のことは地域の先輩が一番の先生。困る前に聞く人を見つけておきましょう。

準備編 ― 始める前にそろえること

田んぼを見つける

市町村の農業委員会・農地バンク、JA、そして地域の知り合いづてが主な入口です。初心者が最優先で確認すべきは。水路から自由に入水・排水できるか、日当たりは良いか、前の耕作者が除草剤や肥料をどれくらい使っていたかを聞いておきましょう(自然栽培への切り替え1〜2年目は地力が安定しないことがあります)。通いやすさも大切です。除草期の6月は週2〜3回田に行くことになります。

面積の決め方

初めての年は1畝(約100㎡)〜1反(10アール)がおすすめです。1反で穫れるお米はおよそ4〜6俵(240〜360kg)。ご家族が一年に食べる量としては十分すぎるほどです。「もっと広く」は二年目からで間に合います。

そろえる道具と費用の目安

最低限そろえる 長靴(田植え用の田靴)・鎌・スコップ・チェーン除草具(単管とチェーンで自作可、3千〜1万円)・田車(中古5千円〜、新品2〜3万円)・刈払機(3〜5万円)
借りる・頼む トラクター(耕運・代かき)、田植機、コンバインと乾燥は、機械を持つ近隣農家さんやJAへの作業委託が現実的。1反あたり合計2〜4万円程度が相場です。
一年目は育苗まで自分でやるか、自然栽培仲間から苗を分けてもらうかの二択。自信がなければ苗は譲ってもらい、二年目から塩水選・薄まき育苗に挑戦するのも良い順序です。

※ 手植え・手刈り(はざ掛け)なら1畝規模で機械なしでも可能です。体験としては最高ですが、1反を超えるなら機械の力を借りましょう。

年間の時間の目安(1反・機械委託の場合)

もみまき〜育苗の世話で数日、田植え1日、6月の除草が週1〜2回×1時間半を1か月半、畔草刈りが月1回、水見が週2〜3回×15分、稲刈り1日。勝負どころは6月の除草だけで、あとは「見に行く」ことが仕事の大半です。

あなたの田んぼの作業暦をつくる 地域・品種・田植え日・面積をタップで選ぶと、もみまきから稲刈りまでの予定日が自動で並びます。できた工程表は印刷したり、スマホのカレンダーに取り込んだりできます。

ほ場の情報を入力(タップで選択)

地域(気候帯)
品種 ★=自然栽培向き
田植え日
実施面積

自然栽培に向いている品種一覧

肥料を入れない田では、「肥料を効かせて多収する」ために育種された現代品種より、少ない養分でも自力で根を張る昔ながらの系統が力を発揮します。在来種・固定種なら自家採種ができ、毎年種を採り続けるほどあなたの田に適応した稲になっていきます。工程表の品種選びで★が付いているのが、ここで紹介する品種です。

自然栽培の定番品種

朝日(旭)
晩生
岡山生まれの在来系。無肥料でも収量が安定し、西日本の自然栽培で最も定番。あっさりと上品な食味で、コシヒカリ系とは別系統の味わいです。
亀の尾
中生
明治生まれの在来種で、コシヒカリ・ササニシキの祖先にあたります。冷えに強く東日本向き。酒米としても人気で、自然酒の蔵元からの引き合いもあります。
イセヒカリ
晩生
伊勢神宮の御田で見出された強健種。茎が太く倒伏や病気に強いため、初めての自然栽培でも扱いやすい品種です。
ササシグレ
中生
ササニシキの親品種。少ない養分でよく育ち、あっさり系の澄んだ食味。自然栽培ファンの支持が厚い品種です。
ハツシモ
晩生
岐阜の大粒種。草勢が強く倒れにくい、晩生の安心株。冷めてもおいしく、おにぎりや寿司向き。
農林22号・農林48号 化学肥料が普及する前に育成された系統で、少肥適性が高い。多くの現代品種の祖先でもあり、「自然栽培の隠れた名品種」と呼ばれます。
ハッピーヒル
中生
自然農法の提唱者・福岡正信さんが育成した品種。強健で穂が大きく、無肥料でも多収が狙えます。
ササニシキ
中生
あっさりした食味の代表格。肥料を効かせると倒れやすい品種ですが、無肥料ではむしろ健全に育ちます。和食・寿司との相性は抜群。
黒米・赤米(古代米)
晩生
野生の強さを残した最も強健な稲。やせた田でもよく育ち、彩り米として販売単価も高いため、小面積の副作物にも向きます。

選び方のヒント

迷ったら「地域で実績のある品種」×「種籾・苗が手に入るか」で決めましょう。西日本なら朝日・イセヒカリ・ヒノヒカリ、東日本なら亀の尾・ササシグレ・ひとめぼれあたりが入口になります。コシヒカリも「無肥料だと倒れにくくなる」ため自然栽培での実績は豊富です。種籾や苗は、近くの自然栽培生産者や自然栽培の種苗ネットワークから譲り受けるのが確実で、その土地に馴染んだ種が手に入ります。そして収穫したら、一番よく実った株から来年の種を採ること。自家採種こそ自然栽培の品種選びの完成形です。

全工程の解説 工程表に出てくる作業の「やり方」と「自然栽培のポイント」を、作業の順にまとめました。

1土篩い(つちふるい)冬〜早春

どんな作業?

育苗箱に使う土(培土)を篩(ふるい)にかけ、石や草の根、わらくずを取り除いて、粒のそろったやわらかい土に仕上げる作業です。苗づくりの土台をつくる、一年の米づくりの最初の仕事です。

やり方

網目5mm前後の篩で土をふるい、床土(とこつち)用と覆土(ふくど)用に分けて確保します。土はよく乾かしてから篩うと目詰まりせず、さらさらと仕上がります。育苗箱1箱あたり床土・覆土あわせて4〜5kgほど必要です。

自然栽培のポイント市販の肥料入り培土は使わず、自分の田や近くの山の無肥料の土を使います。土そのものの力で育った苗は、根が強く、田植え後の活着が違います。前年のうちに土を確保し、雨の当たらない場所で乾かしておくと冬の作業が楽になります。
注意除草剤や肥料が使われた可能性のある場所の土は避けること。雑草の種が多い表土ではなく、少し下の層の土を使うと育苗箱の雑草が減ります。

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2もみまき(播種)田植えの約30日前

どんな作業?

選別した種籾を育苗箱にまき、苗を育て始める作業です。「苗半作(なえはんさく)」と言われるとおり、米づくりの半分は苗で決まります。

やり方

まず塩水選(えんすいせん)で軽い籾を除き、充実した種籾だけを選びます。その後3〜7日ほど浸種して芽出しをし、育苗箱にまいて覆土します。

自然栽培のポイント薄まき(1箱あたり乾籾60〜80g)が鉄則です。密にまくとひょろ長い弱い苗になりますが、薄くまけば1本1本が太く、がっしりした成苗に育ちます。プール育苗にすると水管理が楽で、病気にも強くなります。種は自家採種を続けるほど、その田に合った強い稲になっていきます。
注意浸種は冷たい水でゆっくりと(水温×日数の積算で100℃が目安)。急な高温はむら発芽のもとになります。水は毎日入れ替えましょう。

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3耕運早春〜田植え前

どんな作業?

トラクターなどで田を耕し、前年の稲わらや刈り草を土に混ぜ込みながら、土をやわらかくほぐす作業です。

やり方

稲わらは秋〜冬のうちに土に還しておくと、田植えまでに十分分解が進みます。春の耕運は入水の2週間以上前までに済ませ、わらの分解ガスが苗を傷めないようにします。

自然栽培のポイント深く耕しすぎないこと。耕深は10〜15cm程度の浅耕とし、微生物やミミズが暮らす土の層構造をなるべく壊さないようにします。肥料を入れない代わりに、稲わらと草を土に還すことが地力の源になります。
注意未分解のわらが多いまま入水すると、ガス湧きで根が傷みます。わらの状態を見て耕運の時期を決めましょう。

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4しろかき(代かき)田植えの3〜7日前

どんな作業?

田に水を入れて土をかき混ぜ、トロトロの状態にして表面を平らにならす作業です。水持ちを良くし、苗を植えやすくします。

やり方

荒代(あらじろ)と植え代(うえじろ)の2回に分けて行うのが基本です。荒代で土を大まかにかき混ぜて雑草を発芽させ、植え代でその芽を練り込んでから田植えをすると、雑草を一世代減らせます。

自然栽培のポイント除草剤を使わない栽培では、代かきの「均平(きんぺい)」が除草の第一歩です。田面が平らであれば水深が揃い、深水管理で雑草を均一に抑えられます。高低差が5cmあるだけで、高い所から一斉に草が生えてきます。丁寧すぎるほど丁寧に、が合言葉です。
注意かき混ぜすぎると土の粒子が細かくなりすぎて酸素不足になり、根張りが悪くなります。「浅く、平らに」を心がけましょう。

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5田植え5月下旬〜6月中旬(地域による)

どんな作業?

育てた苗を田に植える、一年で最も大切な節目の作業です。ここからの日数を基準に、除草や水管理の予定が決まっていきます。

やり方

葉齢4〜5葉まで育てた成苗を、1株2〜3本という少ない本数で、坪40〜50株の疎植(そしょく)にします。植え付けは浅植えを基本とし、深植えは分げつを遅らせるので避けます。

自然栽培のポイント疎植にすると株の間を風と光が通り、病気や虫に強くなります。肥料がない分、稲は自分の根で養分を探しに行き、太い根を張ります。「密に植えて肥料で育てる」の逆、「まばらに植えて根で育てる」が自然栽培の田植えです。
注意田植え直後から雑草との競争が始まります。植えたらすぐに深水(5〜7cm)にして、雑草の発芽を抑えましょう。

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6. 除草 ― 自然栽培の要 除草剤を使わない米づくりでは、雑草が「見えてから取る」のではなく「見える前に絶やす」のが鉄則です。雑草の発芽初期(糸状期)に田面を撹拌すれば、小さな芽は浮いて枯れます。チェーン→田車→中耕除草機→手取りと、時期に応じて道具を使い分け、深水管理と組み合わせて雑草を抑えます。

6-1チェーン除草田植え後2〜5日から、7日おきに2〜3回

どんな作業?

ロープにチェーンを吊るした道具を田面に沈め、人が引いて歩くことで表土をかき混ぜ、発芽したばかりの雑草を浮かせて枯らす除草法です。

やり方

雑草がまだ目に見えない「糸状期」に行うのが最大のコツです。田植えの2〜5日後に1回目、その後7日おきに2〜3回繰り返します。苗の上を通しても、活着した苗は倒れてもすぐ起き上がるので心配いりません。

自然栽培のポイント1回の作業は10アールあたり30分ほどと軽く、初期除草として最も効率的です。深水管理と組み合わせると効果が倍増します。「草が見えないうちにやる」――見えてからでは遅い、を徹底しましょう。
注意活着前(田植え直後1〜2日)の苗は抜けやすいので、田の様子を見て開始日を決めること。

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6-2田車(たぐるま)田植え後8〜12日ごろ

どんな作業?

回転爪のついた手押しの除草具を条間(じょうかん・株の列の間)に押して歩き、土を撹拌して雑草を浮かせる、昔ながらの除草法です。

やり方

条に沿ってまっすぐ押し進めます。往復しながら全ての条間を通すため、10アールあたり2〜3時間が目安です。土をコロコロと転がすように、一定のリズムで押すのがコツです。

自然栽培のポイント田車は除草と同時に土に酸素を送り込む「中耕」の効果があり、稲の根張りがぐんと良くなります。除草のためだけでなく、稲を元気にするための作業と考えると、この時間が惜しくなくなります。
注意株間(株と株の間)の草は田車では取れません。後日の手取り除草で補います。田植えの条間を揃えておくと作業が格段に楽です。

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6-3中耕除草田植え後13〜18日ごろ

どんな作業?

エンジン付きの水田中耕除草機(歩行型・乗用型)で条間の土を撹拌し、残った雑草を除きながら土に酸素を入れる作業です。

やり方

チェーン・田車で抑えきれなかった雑草が対象です。除草爪が土を数センチの深さでかき回し、雑草を根ごと浮かせます。歩行型で10アールあたり1〜1.5時間、乗用型なら30分ほどです。

自然栽培のポイントこの時期の中耕は、分げつ最盛期の稲に酸素を届ける追い風になります。「除草した田は稲の色が変わる」と言われるほど。ここまでの3段階(チェーン→田車→中耕)で雑草の主力を断てれば、あとは手取りだけで夏を越せます。
注意稲の根が条間に広がり始める時期なので、遅すぎる中耕は根を切ってしまいます。田植え後3週間までを目安に終えましょう。

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6-4手作業(手取り除草)6月〜7月 随時

どんな作業?

機械や道具で取りきれなかった株間の雑草を、田に入って手で抜く作業です。自然栽培の米づくりで最も地道で、最も確実な除草です。

やり方

コナギ・ヒエ・オモダカなどを、根ごと抜いて泥に深く押し込むか、田の外に持ち出します。特にヒエは稲に似ているので、葉の付け根(稲には毛がある)で見分けます。

自然栽培のポイント「今年の一株が来年の千株」。雑草は種を落とす前に取ることが、翌年の除草を楽にする一番の近道です。田を歩くこと自体が稲の観察になり、生育の変化や虫の様子に気づけます。手取りは除草であると同時に、田との対話の時間です。
注意夏の炎天下の作業は朝夕の涼しい時間帯に。熱中症対策を忘れずに。

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7畔草刈り5月〜9月に数回

どんな作業?

田を囲む畔(あぜ)の草を刈る作業です。風通しを良くし、畔の点検を兼ねながら、シーズン中に数回行います。

やり方

刈払機で畔の内側・上面・外側を刈ります。刈った草は畔に敷いておくと畔の乾燥と崩れを防ぎ、やがて土に還ります。

自然栽培のポイント丸刈りにせず少し高さを残す「高刈り」にすると、カエルやクモなど稲の虫を食べてくれる生きものの住みかが残ります。畔は害虫の発生源ではなく、天敵の供給源。刈りすぎないことも技術のうちです。
注意出穂の直前〜出穂期に畔草を刈ると、草にいたカメムシが一斉に稲穂へ移動し、斑点米の原因になります。出穂の2週間前までに刈り終えるか、出穂中は刈らないこと。

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8中干し田植え後40〜50日ごろ

どんな作業?

田の水を一度抜いて土を軽く乾かし、稲の生育を切り替える水管理です。無駄な分げつを止め、根を深く張らせます。

やり方

目標の茎数(1株20本前後)に達したころに落水し、田面に軽くヒビが入る程度まで7〜10日乾かします。その後は間断かん水(水を入れては自然に減らす繰り返し)に移ります。

自然栽培のポイント自然栽培では「軽め」の中干しが基本です。強く乾かすと土の生きものが打撃を受け、せっかくの土の力が損なわれます。もともと疎植・無肥料の稲は過剰分げつになりにくいため、田の生きものを守る目的で中干しをしない(または田の一部に水たまりを残す)選択をする生産者もいます。
注意幼穂(ようすい)ができ始めてからの強い乾燥は収量に直結します。中干しは幼穂形成期の前に終えること。

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9出穂(しゅっすい)田植え後65〜82日ごろ(品種による)

どんな作業?

茎の中で育った穂が外に出てくる、稲の一生で最大の節目です。穂が出た日の午前中に開花し、2時間ほどで受粉が終わります。田の半分で穂が出た日を「出穂日」と呼び、ここから収穫日を数えます。

この時期にすること

出穂前後2週間は稲が最も水を必要とする時期です。「花水(はなみず)」と呼ばれるたっぷりの水を切らさないようにします。作業としては見回りが中心で、田に入る作業はしません。

自然栽培のポイント出穂日を記録しておきましょう。収穫適期は「出穂からの積算温度約1,000℃(おおむね40〜45日)」で決まるため、出穂日がわかれば稲刈りの日がほぼ読めます。朝の田で一斉に開く籾の花は、一年でこの時期だけの風景です。
注意開花中(午前中)は田に入ったり水を大きく動かしたりしないこと。受粉を妨げると不稔(実らない籾)の原因になります。

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10出穂後の水管理出穂〜稲刈り10日前

どんな作業?

穂に養分を送り込む登熟(とうじゅく)期間の水管理です。この1か月あまりの管理が、米の粒の充実と食味を決めます。

やり方

出穂後2週間はたっぷりの水を保ち、その後は間断かん水に切り替えます。水を入れて2〜3日で自然に減るのを待ち、また入れる――この繰り返しで、根に水と酸素を交互に届けます。稲刈りの約10日前に最後の落水をします。

自然栽培のポイント「早すぎる落水は米を痩せさせる」。登熟後半まで根を生かし続けることが、粒張りの良い、味の乗った米につながります。無肥料の稲は根の力で登熟するため、慣行栽培より落水を遅らせ気味にするのがコツです。
注意コンバインで刈る場合は田が十分乾いている必要があります。水はけの悪い田は落水をやや早めるなど、田ごとに加減しましょう。

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11稲刈り出穂後40〜45日ごろ

どんな作業?

実った稲を刈り取る、一年の集大成の作業です。刈るタイミングの見極めが、米の味と品質を最後に左右します。

やり方

穂全体の8〜9割の籾が黄金色になり、穂の根元にわずかに緑が残るころが適期です。早刈りは未熟米(青米)が増え、刈り遅れは胴割れや食味低下のもと。コンバインで刈って乾燥機にかけるか、バインダーで刈ってはざ掛けにします。

自然栽培のポイント時間が許すなら天日干し(はざ掛け)を。逆さに吊るされた稲は、わらに残った養分を最後まで籾に送り込みながら、太陽と風でゆっくり乾きます。機械乾燥では出せない味の深みが生まれます。乾燥後の籾は水分15%前後を目安に。来年の種籾は、この中から一番よく実った株を選んで取り分けておきましょう。
注意刈り取り前の台風・長雨で倒伏した稲は早めに刈ること。濡れたまま放置すると穂発芽してしまいます。

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12秋起こし稲刈り後2〜4週間(10月〜11月)

どんな作業?

稲刈りの終わった田を秋のうちに耕し、稲わらや刈り草を土にすき込む作業です。一年の締めくくりであると同時に、翌年の米づくりの始まりでもあります。

やり方

コンバインで刈った場合は、細かく裁断されたわらを田全体に均一に広げてから、10cm程度の浅耕でざっくりとすき込みます。わらが乾いてから、田が乾いているうちに行うのがコツです。寒くなる前に済ませると、冬の間に微生物がわらをゆっくり分解してくれます。

自然栽培のポイント肥料を入れない米づくりでは、わらと草を土に還すこの作業こそが地力の源です。秋にすき込んでおけば春までに分解が進み、春すき込みで起こりがちなガス湧き(未分解のわらが発酵して根を傷める現象)を防げます。「秋起こしまでが今年の米づくり」と考えましょう。
注意湿った田で耕すと土が練れて構造が壊れます。田が乾いた日を選ぶこと。雪の多い地域は初雪前に済ませましょう。

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田んぼの雑草図鑑と防除方法

除草剤を使わない防除の基本は、どの草にも共通の「予防の三点セット」です。①代かきの均平、②深水管理(5〜7cm)、③発芽初期の撹拌除草(チェーン→田車→中耕の7日間隔)。この3つで雑草の8割は抑えられます。残り2割は草の性質に合わせて対処します。一年草は「種を落とさせない」、塊茎(球根)で増える多年草は「秋起こしで塊茎を弱らせる」が原則です。

除草方法一覧

深水管理(予防) 田植え直後から水深5〜7cmを保ち、コナギ・ヒエの発芽自体を抑えます。毎日の水見だけでできる、すべての除草の土台です。
チェーン除草 田植え後2〜10日、7日間隔で2回。まだ見えない糸状期の芽を浮かせて枯らします。約30分/10a。単管+チェーンで自作可(3千〜1万円)。
田車(たぐるま) 田植え後2〜3週目。条間の育ち始めた草を撹拌して浮かせます。2〜3時間/10a。中古5千円〜。中耕効果で根張りも良くなります。
中耕除草機 田植え後3〜4週目の仕上げ。条間を整えながら土に酸素を入れます。歩行型で1〜1.5時間/10a。レンタルや共同利用も。
手取り除草 6〜7月に随時。株間と取り残しに対する、最も地道で最も確実な方法。道具は鎌一本。種を落とす前に抜くのが鉄則です。
紙マルチ田植え 再生紙のシートを敷きながら植え、光を遮って初期雑草をほぼ抑えます。資材費が高め(2〜3万円/10a)ですが、一年目の保険としては有力な選択肢。
秋起こし(翌年の予防) 収穫後に耕して塊茎雑草を冬の寒さにさらし、わらを分解。翌年の草の量を確実に減らす「来年のための除草」です。

※ 基本は「深水+チェーン→田車→中耕+手取り」の組み合わせです。紙マルチは、田の条件や労力に応じて足し引きしてください。

コナギ一年草・種子
ハート形のつやのある葉。水田雑草の最強手で、田植え直後から一斉に発芽し、放置すると田一面を覆って稲の養分を奪います。無農薬栽培の失敗原因の第1位です。
防除方法発芽初期(糸状期)はわずかな撹拌で浮いて枯れるため、チェーン除草の初回(田植え後2〜5日)が最大の防除機会。深水にも弱いので、深水+7日間隔の撹拌で徹底的に。取り残しは8月の開花前までに手取りし、種を落とさせないこと。
ノビエ(タイヌビエなど)一年草・種子
稲そっくりのイネ科雑草。見分け方は葉の付け根――稲には葉耳(ようじ)と毛がありますが、ヒエにはありません。株元が扁平で白っぽいのも目印です。
防除方法浅水・干上がりで発芽が進むため、深水管理が最も効きます。条間は田車・中耕除草で取れますが、株間に残ったものは手取りで。穂が出たら種がこぼれる前に必ず抜き取り、田の外へ。1本で数千粒の種を落とします。
オモダカ多年草・塊茎
矢じり形の葉が特徴。土中の塊茎(小さな球根)から芽を出すため体力があり、撹拌除草だけでは倒しきれません。夏に白い三弁の花を咲かせます。
防除方法見つけ次第、塊茎ごと手で抜き取るのが基本。葉だけちぎっても再生します。秋起こしで塊茎を地表近くに掘り出し、冬の乾燥と凍結にさらすと年々減っていきます。数年がかりで根絶するつもりで。
イヌホタルイ多年草・種子+塊茎
針のような細い茎が株立ちになるカヤツリグサ科の草。種子と塊茎の両方で増え、代かき後すぐに発芽してきます。
防除方法発芽初期は撹拌除草がよく効くので、チェーン除草の7日間隔を守ることが第一。育ってしまった株は塊茎ごと手取りで。深水との組み合わせで発芽自体を減らせます。
クログワイ多年草・塊茎
マツバイに似た細い管状の茎が伸びる難防除雑草。土の深い所(10〜20cm)の塊茎から次々に芽を出すため、撹拌除草がほとんど効きません。
防除方法一年での根絶は難しく、連年の対策で塊茎の数を減らします。毎年の秋起こしで塊茎を掘り上げて冬にさらすこと、シーズン中は見つけ次第抜くことの積み重ねが唯一の道。多発田では中干しをしっかり入れて塊茎の形成を抑えるのも有効です。
ウリカワ多年草・塊茎
細長いヘラ形の葉がロゼット状に広がるオモダカ科の草。小さな塊茎から発生し、匍匐枝で横に増えていきます。
防除方法発生初期の撹拌除草+手取りで対応。オモダカ同様、秋起こしによる塊茎の掘り上げが翌年の発生を減らします。深水で発芽勢いを弱められます。
セリ多年草・匍匐茎
香りの良い山菜としても知られますが、田では畔際から匍匐茎(ランナー)を伸ばして侵入してきます。
防除方法侵入口である畔際の管理が第一。畔草刈りのついでに田の縁を見回り、伸びてきた匍匐茎を手で引き抜きます。田の中まで広がる前の早期対応が肝心です。
アオミドロ・表層藻類藻類
水面や水中に繁茂する糸状の藻。日射の強い年に多発し、小さな苗にまとわりついて倒したり、光を遮ったりします。厳密には雑草ではありませんが初年度によく悩まされます。
防除方法大発生したら一度水を落として乾かすか、新しい水に入れ替えます。竹ぼうきや熊手でからめ取るのも有効。苗が大きくなれば負けなくなるので、育苗でがっしりした成苗を植えることが一番の予防です。

※ 雑草の顔ぶれは田んぼごとに違います。一年目に「どの草が多い田か」を観察して記録しておくと、二年目からの対策が的確になります。雑草は敵であると同時に、その田の土の状態を教えてくれる指標でもあります。

一年目のつまずきトップ5と回避法

先輩たちが一年目に実際にやってしまった失敗は、ほぼこの5つに集約されます。逆に言えば、これだけ避ければ収穫までたどり着けます。

1. 気づいたら田が草だらけ(最多の失敗)
「草が生えたら取ろう」と構えていると、見えたときには手遅れ。コナギは一面に発芽してからでは取り切れません。
回避法除草はカレンダーで先に日程を決めてしまうこと。田植え後3日・10日・15日の3回は、草が見えなくても必ず田に入る。「見えないうちにやる」が唯一の対策です。
2. 深植え・密植で稲が育たない
不安から苗をたくさん深く植えると、分げつが進まず、風が通らずに病気も出やすくなります。
回避法1株2〜3本・浅植え・坪40〜50株の疎植を信じる。植えた直後は頼りなく見えますが、7月には見違えます。
3. 田が平らでなく、水が効かない
高低差があると高い場所だけ水が浅くなり、そこから一斉に草が生えます。深水しても水面から島が出る状態です。
回避法代かき委託時に「均平を丁寧に」とお願いする。植え代のあとトンボで高い所をならすだけでも違います。均平は除草剤の代わりだと考えましょう。
4. 水管理の失敗(切らす・抜くのが早い)
出穂前後に水を切らすと不稔に、収穫前に早く落水しすぎると米が痩せます。
回避法出穂前後2週間は絶対に水を切らさない。落水は稲刈りの10日前。この2つの日付を工程表からカレンダーに入れておきましょう。
5. 稲刈りの時期を逃す
「まだ青いから」と待ちすぎて胴割れ・食味低下、または台風で倒伏してから慌てるパターンです。
回避法出穂日をメモし、40日目から田に通って籾の色を見る(8〜9割黄化が合図)。コンバインを頼む場合は出穂日が分かった時点で予約を入れておくこと。

最後にもう一度。一年目の成果は「収量」ではなく「収穫までたどり着くこと」です。自分の田で穫れた一杯のごはんの味は、何にも代えがたいものです。二年目はその経験が、必ずもっと良い米にしてくれます。

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免責事項

本サイトに掲載している作業時期・日数・出穂予定日・収穫予定日・収量・費用などの数値は、一般的な知見に基づく目安であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。実際の生育は、地域・ほ場の条件・品種・種子の由来・その年の気象などによって大きく変動します。作業の実施にあたっては、ご自身のほ場の観察を最優先とし、必要に応じて地域の農業普及指導センター・JA・経験ある生産者などにもご相談ください。

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自然栽培の米作り 一年目の教科書 ― 農薬・化学肥料・除草剤を使わない米づくりの道しるべ
時期・日数・費用はいずれも目安です。地域・品種・その年の気候に合わせてご調整ください。
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