September 17, 2026

種をまく人にできること

By 礒﨑遼太郎

9月に入りました。今年は8月にほとんど雨が降らず、9月になってから雨がよく降ります。

カフェづくりが、いよいよ大詰めです。昨日は机を作りました。大きな工事として残っているのは、水道とガス。あとは棚をつくったり、細かい造作をしたりという段階まで来ました。

その作業の合間に、ジェフと話していました。「ひとつ、夢が叶いそうですね」。そう言われて、僕もとても嬉しくなりました。そして自然に、「次は何だろうね」という話になっていきました。

日本一になりたいという夢と、僕にできること

正直に言うと、僕も「日本一になりたい」「世界一になりたい」という目標を掲げるのが好きです。大きな夢を語るのは、単純にワクワクします。

でも、そういう目標は、自分の努力だけでは届かないところがあるということも、同時にわかっています。時代と運と、育ってきた環境。そういうものが、密接に関わってきます。

だから僕にできることは、おそらく、種をまいて、育てて、苗木をつくるところまでなんだと思います。その先、大きく育つか、小さいままかは、自然次第。規模は、自分で決めるものではなく、自然に沸き上がってくるものだと思うようにしています。

だからこそ、できるだけたくさんの種をまいて、育てる。ひとつひとつの仕事や事業を、自分の手で種まきし、ある程度のところまでは自分の仕事として育てる。そこから先、日本一になるか世界一になるかは、そのときの巡り合わせ次第。そこまで考えてしまうと、ストレスになってしまうので、あえて考えないようにしています。

課題を、分けて考える

一時期、『嫌われる勇気』という本をよく読んでいました。あの本には、課題の分離という考え方が出てきます。

自分がしないといけないことは何か。企業家であり、農民であり、4人の子どもの父親である僕の立場で考えると、まず大事なのは、意欲が自分の中から湧いてくることを選ぶことです。

たとえば、歌手になりたいという夢があったとします。歌手になれるかどうかは、正直わかりません。でも、歌い続けることはできます。だったら、歌い続けることを目標にする。その思いを持ち続けることを、目標にする。

そこから先、それがどこまで届くかはわかりません。けれど、形に見えるところまでは実現させる。たとえばYouTubeを撮るところまでは、自分の力でどうにかできます。そこから先、それが仕事として大きく育つかどうかは、正直わかりません。最近は、どのプロジェクトもそんなふうに進めるようになりました。

もちろん、やりかけのまま形にならなかったこともたくさんあります。それも事実です。

形にするところまでが、僕の仕事

けれど、10年このような暮らしをしてきて、ひとつわかったことがあります。種をまかないと、何も始まらない。

もともと裕福だったわけでも、大きな資本があったわけでもない僕らのような立場にとっては、とにかく始めるということが、なにより大事なんだと思います。ある程度のところまで形にする、ということも同じくらい大事です。そこから先、大きく育てられるかどうかは、そのときの運にもよる。不確定な要素のほうが、多いくらいです。

それでも、始めないといけません。今回のカフェも、そうでした。形にしました。そこから先どう育っていくかは、僕の努力と、そのときの流れと、運とが、密接に関わってくるところです。そこから先は、少し、天に任せる心境でいます。

とにかく、手数を多く打っていくこと。ひとつの仕事がきちんと成果になるまでには、5年ほどかかると思っています。だから、始めて、続けて、シンプルにして、ゆっくり育つのを待つ。それが、今の僕の仕事への向き合い方です。

もし会社に勤めていて、その会社を離れることになったら、また次の仕事を探せばいい。けれど、仕事そのものを生み出し、育てていく立場では、そうはいきません。長い目で見て、きちんと根づく仕事を、これからもずっとつくり続けていくしかないのだと思います。

種をまき続けるということ

仕事をつくることは、僕にとって、夢を叶えるということと同じです。

10年目の今年は、たくさんの種をまいた一年でした。日本酒づくり、カフェづくり、一般社団法人の設立、新しい商品、いくつかのウェブアプリケーション。どれも、この先どうなるかはわかりません。それでも種をまき続けることこそが、すべての根っこにあるのだと思っています。

こういう暮らしは、不安定といえば不安定です。天候も気まぐれで、毎年、なにかしらの自然の出来事が起こります。今年も、8月はほとんど雨が降らず、9月になって急に降るようになりました。その中で、新しい仕事を、そのつど柔軟に生み出していく。そういう向き合い方になってきました。

種をまくには時間がかかるということ。そして、自分から始めないといけないということ。この2つを胸に、今日もいろんな仕事を続けています。

ジェフと話していた、あの小さな会話に戻ります。「ひとつ、夢が叶いそうだね」「次は何だろうね」。そうやって、いろんなことを考えてこられたのは、農業をしながら、時間を自由に使わせてもらえるからです。この時代のおかげ、仲間のおかげ、家族のおかげ。本当に、いろんな方々のおかげだと思っています。

苗を植えるように、今日も次の種をまいていきたいと思います。


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