juillet 26, 2026

アクセルと過ごした二ヶ月

Par 礒﨑遼太郎
アクセルと過ごした二ヶ月

フランスから、アクセルという三十五歳の若者が、悠三堂に二ヶ月間来ていました。

悠三堂では、正式なインターンシップというかたちではなく、一種の体験として、こうした受け入れを提供しています。彼はもともとパリのお茶屋さんで働いていた経験があって、その経験を生かしながら、本当に情熱的に、たくさんのことに取り組んでくれました。

お茶づくりの、最盛期に

アクセルが来てくれたのは、五月。悠三堂のお茶づくりが、いちばんの最盛期を迎える時期でした。

紅茶づくり、碾茶づくり、天日干しのお茶づくり。さまざまなお茶づくりに、次々と取り組んでくれました。

さらに六月前半には、碾茶の収穫にも参加。寒冷紗の巻き取りや、お茶の収穫作業では、メインのお茶刈りのパートを担当してくれるまでになりました。体験に来た人、というより、現場の戦力そのものでした。

古民家で、深まった仲

いちばん忙しい時期に来てくれたからこそ、彼とは本当にたくさんの時間を、一緒に過ごすことができました。

悠三堂の古民家でのミーティングや宿泊を通して、仲が深まっていきました。そして彼自身が、フランスからたくさんの友人を、悠三堂の作業に連れてきてくれました。人が人を呼んでくれる。これは、悠三堂の作業のあり方を考えるうえでも、大きな助けになりました。

茶道と、日本の友人たち

彼は、お茶の製造だけでなく、茶道にも関心の高い人でした。

僕が担当している茶道教室にも、三回ほど一緒に行きました。畑で葉を育て、工場でお茶にして、茶室で点てる。その全部に触れて、彼はさまざまな学びを得てくれたようです。

滞在中は、悠三堂を通じて友人がたくさん訪ねてくれました。彼の明るい、おしゃべりなキャラクターも相まって、たくさんの日本人の友人ができた。それも、彼にとって良かったことだと思います。

小学校にも、行きました

アクセルの人柄について、もう少し書かせてください。

彼は、人が優しくて、気さくです。滞在中には、一緒に小学校へ行って、授業に参加したこともありました。子どもたちと一緒にサッカーをして、ゲームを体験して。フランスから来たお茶の青年が教室にいる。それだけで、この地域の社会にも、新しい刺激を与えてくれました。

畑と工場だけでなく、村の暮らしの中にも、彼はすっと入っていってくれた。そういう人でした。

二週間では、起こらないこと

悠三堂の受け入れは、通常は二週間ほどのインターンや研修です。

でも彼の場合は、二ヶ月という長期でした。だからこそ、たくさんのことが起き、さまざまな学びがありました。二週間では通り過ぎてしまうことが、二ヶ月だと、ちゃんと自分の中に根を下ろしていく。長く居るということの意味を、彼を見ていて、あらためて感じました。

葉っぱから、一杯のお茶になるまで

七月には、悠三堂が提供している東吉野村のリバーサイドティーファクトリーでの製茶体験もありました。実際にお茶を収穫して、製茶するところまで、一緒に体験できました。

同時に、ヴィンセントと一緒に、ほうじ茶をつくる工場での体験もできました。

茶の葉が、一つの製品になるまで。その全工程を、彼自身が体験して、理解できた。これは、今後お茶に携わっていく人間として、彼にとって大きな学びになったと思います。

畑で摘まれた一枚の葉が、どんな道のりを経て、誰かの一杯になるのか。それを全部、自分の手と目で知っている。そういうお茶の人が、フランスにひとり増えた。それが、僕はとても嬉しいのです。

日本とフランスを、つなぐ人に

アクセルは、フランスで長いあいだ、お茶を淹れる側——お茶屋さんとしての経験を積み重ねてきました。

そこに今回、日本で、製茶の最初から終わりまでを実際に体験した。淹れる側の経験と、つくる側の経験。その両方を持つことは、彼にとって大きな武器になるはずです。そして、日本とフランスのお茶文化のつながりに、アクセルはこれから、大きく貢献してくれると思っています。

彼自身が、悠三堂のお茶を、自然栽培のお茶の良さを、フランスで広めて、発信してくれる。そんな将来も期待できます。悠三堂にとっては、本当にありがたい期間でした。

アクセルが来てくれて、一緒に過ごした二ヶ月間。そこでこれだけのことが起きた。そのこと自体が、本当にありがたかったです。

ハート・トゥ・ハートという、エンジン

悠三堂では、こうやって海外からたくさんの方をお迎えしています。

日本でどうやってお茶が作られているのか。お茶が、どんなふうに考えられているのか。畑や工場での体験、茶道の体験、お茶を淹れる体験。そうしたいろいろな体験を通して、世界各地で自然農法のお茶を広げてくれる人材を、つくり続けています。

今回は二ヶ月。一般的には二週間と、期間としては短いものです。それでも、この体験を通して、僕らのつながりは深くなります。日本と海外のお茶文化のつながりが深くなり、学びが深くなっていく。

広告や宣伝にお金を投じるのではなく、こうしたお互いのハート・トゥ・ハートのつながりこそが、自然の世界で、お茶を世界に広げていくためのエンジンなのだと、僕は思っています。

土と向き合うことが、魅力になる

日本のお茶、自然栽培のお茶、奈良のお茶、そして悠三堂のお茶。その魅力を、大きな世界へ向けて、いちばん魅力的なかたちで伝えること。ときには一緒にご飯を食べながら、考えて、伝えられること。それは本当に、素晴らしいことだと思います。

正直に言えば、農家になって、大変なことは本当にいっぱいありました。卸売や販売に専念したほうが楽なんじゃないか。そう思ったことも、何度もあります。

でも結局、草取りをすること。お茶を刈ること。土と向き合うこと。お茶の木と向き合うこと。地域と向き合うこと。その一つひとつが、本質的なお茶の魅力につながっていく。今は、そう感じています。畑に立っている人間だからこそ、伝えられるものがあるのです。

そして、この本質的なお茶づくりへの、お茶の根本にあるものへの欲求を持った海外の方々が、確実に、世界中に増えている。それを、肌で感じています。アクセルも、その一人でした。だからこそ、僕らは畑からお茶をつくり続けるし、扉を開けて、迎え続けたいと思うのです。

二ヶ月間、本当にありがとう。またいつか、会える日を楽しみにしています。


こうして仲間と一緒につくったお茶を、悠三堂ではお届けしています。よかったらどうぞ。
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